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近年、多くの歯科医院で導入されている口腔内スキャナー。
従来の寒天アルジネートやシリコン印象にとってかわる光学印象に使用する機材として、現在世界中で新製品の開発がすすんでいます。
日本でも2014年の診療報酬改定によって、小臼歯のCAD/CAM冠が保険適用になったことから、口腔内スキャナーを導入する歯科医院が続々と増えています。(参照:いまさら聞けない!CAD/CAM冠ってどんな補綴物?)
そこで、姉妹サイトWHITE CROSSでは会員の歯科医師に向け、口腔内スキャナーについてのアンケートを行いました。(参照:口腔内スキャナーを使っていますか?)
その結果、47.2%の歯科医師が口腔内スキャナーを「導入している」と回答。
「導入していない」と回答した歯科医師の中にも、「導入を検討している」「導入したい!」といった声が多く、今後ますます歯科医院への導入が進むと予測できます。
今回は、そんな口腔内スキャナーについて詳しく解説しますよ!
口腔内スキャナーはどんな時に使用する?
口腔内スキャナーは、従来のアルジネート+寒天の連合印象や、シリコン印象にとってかわる「光学印象」を行う機器として、広く普及しています。
Intraoral Scannerと直訳されるため、IOSと略してよばれることもあります。
現在、口腔内スキャナーを用いた光学印象は、インレーやクラウン、ブリッジだけでなく、義歯、インプラントの上部構造、マウスピース矯正に使用するアライナーなどにも応用されています。
また、患者さんの資料採集として、X線写真や口腔内写真の撮影に加え、全顎の口腔内スキャンを行い、スタディーモデルとしてデータを管理する歯科医院も増えてきています。
最近では、う蝕検知機能を搭載した口腔内スキャナーも登場するなど、ますますニーズが高まっています!
さらには、歯科衛生士が患者さんにTBIを行う際に、口腔内を染め出してからスキャンを行い、スキャン画像を説明に使用するといった活用方法もあるようです。(参照:わたしのDHスタイル #37 松本実歩さん『口腔内スキャナーをDH業務に役立てる』)
口腔内スキャナーをDH業務に役立てる松本さんへのインタビューはこちら
光学印象で補綴物を作製する流れ
理論上、直接口腔内をスキャンする場合は、印象採得から補綴物の設計、製作までの過程をすべてデジタルで行うことが可能です。
しかし、現在の日本では、口腔内スキャナーを用いた光学印象について保険が適用されません。
そのため、患者さんの口腔内を直接スキャンする方法と、従来通りの印象採得を行い、その後作成した石膏模型をスキャンする方法が用いられています。
上記の理由から、保険治療で作製するCAD/CAM冠については、石膏模型をスキャンするという方法で作製する必要があります。
自費治療であれば保険の制約はないため、自費の補綴物を作製する際に光学印象を行う場合は、患者さんの口腔内を直接スキャンすることが多いといえるでしょう。
また、光学印象であっても、製作物の精度を上げるためには3Dプリンターを使用し、模型を作成する必要があるとのこと。
単純なインレーやクラウンなどの症例を選べば、すべての過程をデジタルで完結させることも可能ですが、複雑な形態になればなるほど精度に差が出ることがあるようです。
口腔内スキャナーのメリット・デメリット
魅力的な機能がたくさんある口腔内スキャナーですが、口腔内スキャナーのメリットやデメリットには、どんなものがあるのでしょうか?
まずは、口腔内スキャナーの代表的なメリットについて紹介します。
① 患者さんの負担が少なく、チェアタイムを削減できる
光学印象では、印象材を盛ったトレーを口腔内に装着する際の不快感がなくなるため、患者さんが「型取りされている」という感覚をもちません。
また、印象材の練和や硬化を待つ時間がないため、チェアタイムを大幅に削減できるようになります。
ただし、スキャンの熟練度によって、患者さんの負担やスキャンにかかる時間に差がでるため、スムーズに操作できることが前提のメリットです。
② スキャンした画像を患者さんへの説明に有効活用できる
スキャンした画像はもちろんですが、スキャンしている最中の画像を見せると、よりリアルな口腔内の状況を患者さんに知ってもらうことができます。
また、光学印象のデータを使用すると、最終的にどのような補綴物が装着されるかといったシュミレーションを行うことも可能に。
患者さんにわかりやすく、補綴物装着後のイメージを伝えることができます。
③ 従来の印象材よりも精度に影響がでる因子が少ない
従来の印象材では寸法安定性のように、歯科医師や歯科技工士の熟練度などにより影響が出る因子が多々あります。その反面、光学印象にはそのような因子が少ないため、治療の質の均一化を図ることが可能です。
一方で、従来の印象方法であっても、技術力の高い歯科医師と歯科技工士によって作製された補綴物にはまだ敵わないという声も耳にします。
技術の進歩とともに、今後ますます光学印象の精度が上がることが期待されています。
他にも、「印象材や石膏などの材料費、技工所への郵送費がかからない」「データをすべてデジタルで管理できるため、模型の保管場所が不要」といったメリットもあります。
では反対に、口腔内スキャナーのデメリットについても紹介します。
① 初期費用が高い
材料費や郵送費はかからないものの、口腔内スキャナーを導入するだけで500〜700万円もの費用がかかります。
また、専用ソフトの購入にも数十万円の費用と、メーカーによっては月々のライセンス料もかかってきます。がかかります。
症例数が多ければ多いほどコスト削減には繋がりますが、導入当初から大幅なコスト削減を目指すことはむずかしいかもしれません。
② デジタルオーダーに対応していない技工所がある
歯科医院だけでなく歯科技工所においても、デジタルオーダーに対応するためのCAD/CAMソフトや歯科用3Dプリンターを導入するには、莫大な初期費用がかかります。
そのため、従来の方法でしか発注できない歯科技工所はまだまだ多く、新たな歯科技工所と契約する必要がでてくる場合も。
いつもの歯科技工所に発注できないとなると、導入を足踏みしてしまう院長先生も多いのではないでしょうか。
また、「慣れるまでの操作がむずかしい」「エラーが出た時の対処に困る」といった声もあるようです。
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